過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
一方的に切られた電話に、呆然とした。
園田から自宅待機を命じられた私は、翌日からオフィスに行くことも許されず、一人沈んだ気持ちのまま白紙のスケッチブックを眺め続けるという時間を過ごしていた。

デザインを考える余裕なんて、今は少しもない。食欲もなく、朝から何も食べていない。
何かをする気もまったく起きず、園田に聞かされた話や朔也とのこれまでの付き合いばかりを考えてしまう。

朔也と過ごした時間は、一体何だったのだろう。
顔を合わせないまま別れを告げられ、挙句の浮気疑惑。そして今回の、会社まで巻き込んだうそのクレーム。
それほどまで私は疎ましく思われていたのかと思うと、何ともやるせない気持ちに襲われた。

朔也の取った行動の理由を挙げるとしたら、春乃との結婚に水を差したくないというところだろうか。でも、そんなの私には関係ない。
私たちが別れた理由は、朔也のせいだけだとは言わない。私の態度にも問題があったと自覚があるから。
ただ、別れてから知らされた事実は、あまりにも卑怯で卑劣だ。

朔也との仲は、もはや諦めるしかないと納得しかけていた。心情的にすっぱり切れるものではないものの、足掻いたって仕方がないのだと一応納得したから。
日本に帰っても他人のふりをしていればいい。仕事のやりとりも私から引き継いだ人がそのまま窓口になるだろうし、関わりもなくなっていくものだと思っていた。

けれど、今置かれているこの状況は思ってもみなかった事態だ。
日本で何が起きているのか、状況がまったくわからくてとにかく不安で仕方がない。
間違いなく、パリでの研修は打ち切りになるのだろう。それどころか、このままフェリーチェで勤められるのかは不透明だ。

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