過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「それだけ冗談を言えるのなら、とりあえずは大丈夫か?」

まさか私がどうにかなってしまうとでも思っていたのだろうか? 笑みを潜めた拓斗が、心配そうにこちらを伺ってくる。

「大丈夫、ではないと思います。でも、心配してくれる人がふたりもいたんだって思ったら、少しだけ心が軽くなりました」
「ふたり?」
「はい。ひとりはもちろん、かみや……いえ、拓斗です。それからもうひとり、勤め先の上司が心配して連絡をくれました」

ふたりの存在が、今の私にはとにかくありがたかった。そう思ったら、〝神山さん〟と他人行儀な呼び方ではなく、自然とあの夜のように〝拓斗〟と呼びたくなった。

「それは良かった」

ほほ笑んでくれるところを見ると、私が名前で呼ぶのを受け入れてくれたようだ。前回、彼の方から〝拓斗〟と呼んで欲しいと言ってきたが、今でもそう思ってくれているとわかると、なんだかほっとした。

改めてぐるりと室内を見回した拓斗は、さっきテーブルの上から本棚に戻したスケッチブックに視線を留めた。

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