呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


「――なるほど。明後日開催されるのは、確か王宮の舞踏会だったか……」
「はい。王宮の舞踏会なので大勢の貴族が参加します。不安ではありますけど、悪い噂を払拭するには一番良い場です。リックにこのまま侮辱され続けるなんて嫌です。だって、私の人生はこれからです。一度失敗したからってすべてが駄目になるわけじゃありまえせん。尻尾を巻いて逃げ続けるわけにはいきませんから!」
 この間もらった助言を踏まえつつ、エオノラは挑むように拳を胸の辺りに掲げる。
 クリスは呆気にとられたように暫くこちらを見つめていた。やがて本を閉じると椅子から立ち上がり、エオノラの前に跪く。

「えっ? 急にどうされたんですか!?」
 突然の行動に吃驚して慌てふためいているとクリスが優雅な所作で手を差し出してきた。
「王宮の舞踏会が明後日なら、ダンスの練習相手になろう。暫く練習していなかったんだろう?」
「そうですけど……良いんですか?」
「それはこちらの台詞だ。エオノラ、私と踊ってくれないか?」
 眉目秀麗なことも相俟って、跪くクリスはまるでおとぎ話の王子様の様に素敵だった。

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