呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 エオノラの心臓の鼓動がとくとくと速くなり、そしてきゅうっと何か、甘くも苦い感情が胸を締め付ける。
(どうしたのかしら……変な感じがする)
 エオノラは初めての感情に戸惑った。この気持ちは一体何だろうか。どうしてクリスと目が合った途端、心臓の鼓動が速くなるのだろうか。
(し、しっかりしなくちゃ。クリス様の好意でダンスの練習ができるんだから。集中しないと!)
 顔が熱くなっている気がしたエオノラは自分に落ち着くように何度も言い聞かせると、クリスの手の上に自身の手を載せた。

「喜んでお受けします」
「じゃあ、まずは場所を変えよう」
 彼に連れられて辿り着いたのは庭園にある、石畳の開けた場所だった。
「まずはワルツから踊ろう」
「は、はい。お願いします!」
 ダンスのレッスンは受けていたがいつも女性の家庭教師に男役をしてもらって踊っていた。本来は親族の男性か婚約者が務める役であり、当日までに一緒に練習もする。ゼレクとは数ヶ月前に踊ったきりだった。

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