スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
整った顔立ちに、吸い込まれそうな澄んだ茜色の瞳が月明かりを反射させて輝いている。
自分の髪が綺麗だと褒められたはずなのに、急に自信が持てなくなった。
「いいえ。ご無事で何よりです」
品のある軽やかな声は少女にピッタリで、寄り添い合う二人を纏う空気を華やかに彩っているみたいだった。
そんな少女の反応に、レイは顔を歪めた。
「そう強がるな。震えている」
少女の反応を待たずに、レイは半ば強引に少女の腕を取って――大切なものを壊さないように優しく抱きしめた。
この一瞬の出来事で、私の中で亀裂が入っていた心に完全に割れて砕け落ちていく。
「この戦いに終止符を打ったら、今までの生活を全て捨てて共に暮らそう」
「……いいのでしょうか」
「俺がそう望むんだ。もう我慢はさせない」
「ああ……本当に優しい方ですね。これまでもこれからもずっと、お慕いしております」
「――俺も大切に想う。リーン」
少女リーンの名前を呼んで、嬉しそうに微笑むレイの顔は温かくて優しい。
ラジールくんが言ってた離宮の婚約候補者の話は、どうやら本当だったみたい。