悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
紹介する声の直後、ファンァーレが鳴り響き、煌びやかな会場が目の前に開けた。その明かりの強さもあって、アメリアは眩しさにくらくらした。

とはいえ、緊張していられたのも束の間だった。

エリオットと共に入場してすぐ、拍手で出迎えられ、まずは両陛下の前で挨拶。続いて社交の挨拶回りと目まぐるしかった。

その際、改めて挨拶をした第一王子、二十歳のマティウス・フォン・ウィルアベルは、とても優しげな眼差しをした美青年だった。

物腰が柔らかく、弟王子であるエリオットとは対照的な正統派イケメン王子といった感じだ。言葉の端々からも穏やかな性格が伝わってきて、アメリアは、彼が攻略キャラではないことが信じられなかった。

その後で、すぐに宰相夫妻にも会えた。

「娘から話は聞いているよ」

向こうの方からそう温かく声をかけてくれて、「娘と仲良くしていることを嬉しく思う」と挨拶されたアメリアは、大変恐縮した。

宰相夫妻は、どちらも落ち着いた年齢ながら端整な顔立ちをしていた。けれど、どちらも色合いの濃い金髪をしていて、――ミッシェルのような銀髪ではなかった。



二人で挨拶しなければならない人達については、一通り回り終えた。

続いてエリオットが、個人的に交友のある者達への挨拶に回り出したところで、アメリアはいったん解放されてようやく一息付けた。

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