悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
その彼の視線の先には、これまでダンスの場には全く足を踏み入れることがなかった、ミッシェルの姿があった。

「ミッシェル嬢。僕と、踊って頂けませんか?」

固唾を飲んで守っていると、マティウスがほんの少し頬を紅潮させて、紳士としての礼を取ってミッシェルを誘った。

「はい……。喜んで」

化粧のされた頬を、ほんのりと染めて、ミッシェルが差し出されたマティウスの手を取った。

もうアメリアは、それだけで感動してしまった。一心に手を組んでいる彼女を、エリオットが横目に見やって、ふっと柔らかな笑みを浮かべる。

「――そうされても、やはりますます愛しいな」

言いながら、彼が頭を傾けてアメリアに寄り添う。その姿は、初めて女性をダンスに誘った第一王子マティウスと重なって、後ろから拝見していた紳士淑女達をうっとりとさせた。

まるで恋をしていると言わんばかりに、マティウスの優しげで穏やかなダンスは人々の目を引いた。ミッシェルだけを見つめて、その体が離れるようなステップは踏まずにゆったりと踊り続ける。

ミッシェルもまた、恋した女性の表情でマティウスだけを見ていた。ダンスの技術を披露することもなく、ただ一心に彼にリードを預けている。

――やばい、口から色々と出てしまいそう。

アメリアは感極まった表情の下、興奮メーターがマックスを切って、この雰囲気だけはぶち壊すまいと必死に耐えてもいた。

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