悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
第一王子は、元々〝高貴なる令嬢〟の相手キャラなのではないか。同じようにエンディングに出てこなかった唯一の女性キャラ、ミッシェルのファンの間でとくに騒がれた。

とはいえ、憶測は数方向で意見が割れていた。当時はスピンオフに加えて、シリーズ化、次作でのサブヒロインやコラボ参加もよくあった。

前世でアメリアは、「彼女をヒロインにした作品が別で出る!」と推測していた派側だった。だが追加ストーリーや次作発表もないまま、三十代の半ばで前世の記憶は途切れている。

これは、ゲームで見られなかったこの人の〝物語〟を追うチャンスなのでは!?

アリメアの目が輝きを増した。気づいたミッシェルが見つめ返してきて、手を伸ばしたら届く距離でドキンっと心臓がはねた。

「あっ、あの、親切なお方! わた、私はもう大丈夫ですわ」

追いかけ続けていた〝推し〟本人だ。本当にこの現実を一緒に生きていて、言葉を交わせるんだと思ったら声がひっくり返った。

すると、ミッシェルが口元に少し指をあてて、くすくす笑った。

「良かった。少しは気分も良くなったみたいだね」

< 9 / 230 >

この作品をシェア

pagetop