【短編】貴方だけを愛しています
両手で口を塞ぎ、自分で声を抑えてると、頭が真っ白になった。



「たっちゃん……っ」



「無理させるつもりはなかったが……」



「大丈夫……」



静かになってる廊下。

帰ったかどうか不明。

息を整えながら、私の頭を撫でるたっちゃんの頬に手を伸ばす。



「たっちゃんの、女になれた……」



「ずっと、俺だけの女だ」



「許さない……」



「「…………?」」



「私が1番に幸せになるんだからっ!!」



「お幸せにー」



「「…………;;」」



負け惜しみを言う咲来と、能天気に返事をしてるお兄様。

ムードも何もなくなり、毛布で身体を包んで起き上がり、温くなったミネラルウォーターで喉を潤す。



「行きずりでもするつもりかな」



「纐纈は他に居なかったのかよ」



「私を養子に出す時に、半分近く“今後はビジネス以外の話はしないでくれ”って言われてるからねー……。葉山と的渕家しかないと思う」



ミネラルウォーターを渡し、毛布の中でモゾモゾと下着、ワンピと着る。

今更、自室に戻るつもりはない様子の上半身裸のままのたっちゃんにスエットを着せて、横になる。
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