稲荷寺のパラレル少女
忘れられる存在。


稲荷もそう言っていた。


こっちの世界では正月やお盆さえ廃れていき、信仰する人が途絶えている。


ここにいるキツネたちも、その忘れられていく存在のひとつだ。


「……ごめん」


良介は自分の手を見つめて呟くように言った。


人間に忘れられると消えてしまう。


そんな危うい存在だということを、つい忘れてしまいそうになる。


そのくらいに、キツネたちは出会ったときから楽しそうだった。


「みんな、本当は怖いんです。だからこうして集まって、自分たちがまだ存在していることを確かめあっているんです」


「お、俺は絶対に忘れないから」


「え?」


「ほら、こっちの世界の俺だって、いつもお供えものを持ってきてるんだろ? 俺もなんだ。向こうの世界でよくお供えものを持って行ってる。だからさ、忘れたくても忘れられないっていうか、それが俺の生活の一部っていうか」
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