小さな願いのセレナーデ
これとか…とシンプルなTシャツを指すが、碧維は「ショベルカー!」とショベルカーがバーンとプリントされたTシャツを指した。

「ショベルカーが、いいのか?」
「しんかんせん!」
次に指したのは新幹線がプリントされたパジャマ。

「乗り物が好きなのよ」
そう言うと、昂志さんは少し考え「……わかった」と。

「じゃぁ乗り物のプリントのやつ、全部貰おうか」
「えっ……」
「あと、食器も子供用で乗り物モチーフの物があれば見たい」
「はい、ありますよ」

私はただ、二人がやりとりしている様子をぼーっと眺めていた。
昂志さんが新幹線のランチプレートを手にしては「気に入った食器だったら、野菜も食べるんじゃないかな」と呟く。そういうは既に実践済みなのは、何となく言えなかった。


そして外商の人が帰ると時刻はもう夜八時を回っていた。結局遅くなったので私達は、泊まることにした。というか元々泊める予定だったのは想像がついていたのだが。
さすがにホテル経営者の家なのか、泊まるのに不自由しないアメニティの用意はある。


「碧維、パパと寝ようか。ママにバイバイって」
「バイバイ」

碧維はさっき買った新品のあの新幹線のパジャマを着て、手を振って彼の部屋に消えていった。
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