小さな願いのセレナーデ
(金額……)
私が呆然としてなにも言えない中、彼はカードで当たり前に会計をした。
そして立ち上がり、私の腰に手を回す。
「さぁ行こうか。そろそろ時間だ」
昂志さんと二人で並んで、駐車場まで歩いていく。
途中の姿見に映る私達は、そこそこ見栄えがするような気はしている。まぁ私はプロの手で、ここまで着飾らないと彼に見合わない素材なのだけど。
そして車で向かった先は──まさかの場所だった。
(丸戸不動産の本社……)
あの昨日話した女性、MIAの父親か役員を務める会社だった。
案の定「野島さんと面会予定」だと受付の人に言うと、すぐに私達は案内された。私の同席の必要は?と思うが「晶葉は何も言わずに頷いてて」とのことだった。
そして私達は上層階の応接室で野島さん──あのMIAの父親と対面した。
「これは久我様。わざわざお越しいただき…」
「昨日はどうも。父が振り回して申し訳ないことをしました」
丁寧に頭を下げる野島さんに、昂志さんも頭を下げた。
「今日は翠愛さんとの結婚を正式にお断りするために参りました」
彼はそう言ってまたすぐ頭を下げる。さっきよりも深々と。