小さな願いのセレナーデ

「はぁ~」
車に戻ってくると、昂志さんはネクタイを緩めてシートに思いっきりもたれかかった。

「これで根回し終了か?」
「おつかれ」
「これであいつら黙るかな」
「まぁ会長も諦めたみたいだし、何とかなるんじゃない?子供のこと出されたらねぇ」

大輔さんも頷いている。どうやら私は『敢えて日陰の身を選んだ人』として周知させたいことは理解した。そして会長─彼の父も、碧維の事は認識しているらしい、とはわかる。
昨日見た碧維の姿に、さすがに感づいたんだろう。


「三年前さ」
「三年前…」
「親父と野島さんは強引にでもこの結婚を進めたかった。野島さんは特に出し抜けられると思ったんだろう。ほぼ成立寸前だったけど、俺はそれを潰したかったから、会社の経営権勝ち取って親父を海外の方に押しやったんだ」

「えーっと……」
瑛実ちゃんが言っていた話は、まぁ正解だったということはわかった。


「それで今度は丸戸不動産が海外進出してきて、親父はそれに便乗できないかと考えた訳。だから丸戸不動産と敵対意思が無いことを示したくて、また婚約話を蒸し返された訳だ」
「まぁ今調整の時期だし、昂志君と結婚すればいくつかの権利を戻そうって目論みもあるでしょ。野島さん失脚しそうだし」

大輔さんが補足のように言うが、噛み砕いて理解しようとするも、これが最大の疑問点なわけで。
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