小さな願いのセレナーデ
お兄ちゃんは多くは語らなかったが…大輔からはちょくちょく情報を貰っていて、お父さんと丸戸不動産の役員との間で、お兄ちゃんの縁談が進んでいると聞いていた。

ただその相手は……「ぶっちゃけ俺は嫌いだ」と大輔が吐き捨てるほど最悪な人物だったらしい。
顔は良い。久我家の奥様として連れて歩くには何の不足もしない。むしろ華を添えるぐらいの人だと。
だけど……性格が最悪だと。
表で取り繕っても、元からの腐った性格は隠せないよなと苦い顔をしていた。

まぁ彼女もうちの権力と、あの顔だけはいいお兄ちゃんが欲しいんだろう。
お父さんも丸戸不動産との繋がりに、お飾りの息子の妻として連れ回すには最適な人物だと踏んだんだろう。


「あの、お父さんを海外に出すってどういうこと?」
「俺が社長の座について、親父は海外事業の方に行って貰う」
「そんなこと、できるの?」
「あぁ、俺が海外のホテルグループを買収した。一部に曾祖父が創業したものも入ってる。ここは素直に親父に譲る変わりに、日本の方は俺に渡せと迫るつもり」
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