小さな願いのセレナーデ
妹の面倒を見ながら、親が敷いたレールの上で生きている。
そこに幸せはあるのだろうかと。
「いつかは親を追い抜く」それがお兄ちゃんの人生における目標だと、そう言っていた。
確かにずっと見ていて、それだけをバネにして生きてる人だった。
『社長の息子』という権力を存分に使って登り詰め、邪魔する人は容赦なく切り捨ててきた人だった。
いや……『切り捨て』ではないか。
ちゃんと実力があったから、邪魔者は力づくでねじ伏せてきた。一切の容赦はなく。感情も入れず。
だからいつしか付いた名前はマッキナ。
唯一仲の良かった大輔もびびるぐらい、容赦はなかったと聞いている。
そしてその機械の実力を思い知る出来事が、私の高校入学前に起きた。
「瑛実」
その日はいつになく真剣な顔で、お兄ちゃんが部屋にやってきた。
「俺は親父たちを海外に出そうと思う。いいか?」
そう目を見て言った後、視線を床にそらして呟いた。「もう俺は無理だ」とうんざりとした顔で。