小さな願いのセレナーデ
だからそれまで、ウィーンでバイオリンを弾く環境は整ってはいないのは確かだった。

「できれば三月までは高校でレッスン受けて欲しいわ。年明けからは大学の先生もちょくちょく高校に行くから、大学の先生に見て貰う機会は多いと思うわよ。私も瑛実ちゃんのこと、蒲島先生に見て貰おうかと思ってるわ」
「でも、晶葉先生……」

つまり……晶葉先生は、三月まで私のことを引き受けるつもりで、そこまで『先生のまま』で居るということ。
つまり……私達の関係は、このまま何も変わらないと言うことになる。


やっぱり二人の結婚は、私が一番の障害なんじゃないか。
そう現実を思い知らされて涙が出てくる。


「ごご、ごめん。そんなウィーンに早く行きたかったの?」
焦った様子の晶葉先生が、私の肩を叩いて宥める。

「そうじゃなくて晶葉先生が……」
「私が?」
「ウィーン行くまで、私の面倒見ることになっちゃう……」
「当たり前じゃない、一応義姉になるんだから面倒は当然見るわよ。嫌だった?」
(えっ?)

思わず顔を上げた。
さらっと当たり前に言うもんだか、逆に私が驚く。晶葉先生は、なぜかきょとんとしているが。
< 148 / 158 >

この作品をシェア

pagetop