小さな願いのセレナーデ
「あっ、そういえば瑛実から帰国するって連絡がきたんだ」
「そうなの?」
「東京セントラル交響楽団の入団試験、受けるんだってさ」
「えっ、本当?」
瑛実ちゃんはウィーンの大学で確実にキャリアを積んでいる。この前は国際コンクールに入賞もしていた。今は弦楽四重奏のコンクールに向けて練習していると聞いている。
日本に居る時は、そこまでアンサンブルが好きではなかったらしい。だけどウィーンで学ぶうちにアンサンブルの楽しさに目覚めたと、そう言っていたのを思い出した。
きっとウィーンで、いい仲間に出会ったのだろう。
「大丈夫かオーケストラって……瑛実は我が強すぎると思うんだが……」
「まぁ大丈夫じゃないかな」
確かに拘りが強い面はあるだろう。
だけど彼女の愛嬌のある笑顔は、人に好かれる笑顔だろうし、オーケストラの音に真正面からぶつかっていく姿勢を見せれば、案外可愛がられるんじゃないかと思う。
『自分』じゃなくて『人』と合わせる拘りを持てたなら、それはきっとオーケストラの一員として相応しい人だろう。
「楽しみね」
私は見れないけれど─きっと碧維も、お腹の中の子も、瑛実ちゃんがオーケストラの中で演奏する姿を見てくれるだろう。
そんな未来を想像すると、自然と笑みが溢れていた。
【おわり】
「そうなの?」
「東京セントラル交響楽団の入団試験、受けるんだってさ」
「えっ、本当?」
瑛実ちゃんはウィーンの大学で確実にキャリアを積んでいる。この前は国際コンクールに入賞もしていた。今は弦楽四重奏のコンクールに向けて練習していると聞いている。
日本に居る時は、そこまでアンサンブルが好きではなかったらしい。だけどウィーンで学ぶうちにアンサンブルの楽しさに目覚めたと、そう言っていたのを思い出した。
きっとウィーンで、いい仲間に出会ったのだろう。
「大丈夫かオーケストラって……瑛実は我が強すぎると思うんだが……」
「まぁ大丈夫じゃないかな」
確かに拘りが強い面はあるだろう。
だけど彼女の愛嬌のある笑顔は、人に好かれる笑顔だろうし、オーケストラの音に真正面からぶつかっていく姿勢を見せれば、案外可愛がられるんじゃないかと思う。
『自分』じゃなくて『人』と合わせる拘りを持てたなら、それはきっとオーケストラの一員として相応しい人だろう。
「楽しみね」
私は見れないけれど─きっと碧維も、お腹の中の子も、瑛実ちゃんがオーケストラの中で演奏する姿を見てくれるだろう。
そんな未来を想像すると、自然と笑みが溢れていた。
【おわり】


