小さな願いのセレナーデ
背中のファスナーが下ろされ、するりとワンピースが脱がされる。
そのまま身体はもつれ込むようにベッドに投げ出された。
彼が覆い被さると、首元のネクタイを緩める。
まっすぐ見つめる瞳の奥には、自分が映っていて──少し薄い瞳が、熱を滾らせているのがわかった。
「晶葉」
もう一度口づけを交わすと、お互い服を脱いでいく。
そして一晩中、二人で一つに溶け合った。
そしてこの日から、私は彼と一緒に過ごした。
といっても残り帰国までの十日のうち、会えたのは半分の五日。
しかも殆どが彼の泊まるホテルに呼び出される形で、本当に"合間を縫っての逢瀬"という言葉が似合った。しかも一緒に居る時間も、殆どを仕事に費やしていた。
ウィーン最終日も、私は彼の泊まる部屋を訪れていた。昂志さんの仕事が一段落した頃、二人でワインを開けて、ささやかに講習会終了を祝っていた。
「まさか、昂志さんが来るなんて……」
私は薔薇の花束を目の前に、苦笑いしながらワインを飲んでいる。
今日は講習会の発表会の日でもあった。小さな教会で、講習会のメンバーによる演奏があったのだが、そこに昂志さんが現れた。一言も言っていないのに。