小さな願いのセレナーデ
(指の形……)

親指の爪の形が、菱形に近い変わった形をしていたのだ。
これは碧維と一緒の形。

──やっぱり碧維は、この人達と血が繋がっているんだ。
何とも言い様のない感情が押し寄せてくる。


「じゃあ、チューニングしましょう」
バイオリンを取り出すと、瑛実ちゃんは構えてチューニングをする。
姿勢はすごく綺麗で、彼女の容姿と合わさって絵になる姿だ。

「あ、ストップ」
「はい…?」

少し音を鳴らした所で止めると、瑛実ちゃんはきょとんとした顔でこっちを見た。


「アジャスターちょっと緩んでないかな?」
アジャスターとは音程の微調節ができるネジ状のパーツ。大体の人は、一番細くて微調整が難しいE線(1弦)のみに付けることが多い。

「……本当だ、緩んでます」
少し指で触ると、はっとした顔でこっちを見た。

「これぐらいなら、まだそこまで演奏には影響無いと思うけど、近いうちに交換した方がいいかもね」
そう言うと、ほぉーと感心した顔で頷く。

「音でわかるんですね」
「まぁこれぐらいは」
「さすがプロですね」
「元だけどね」

そう皮肉を言って、苦笑いした。
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