小さな願いのセレナーデ
すると瑛実ちゃんは少し考えて「あぁ、なるほど。そっか」と一人で納得したように頷いた。
「二年ぐらい前のゲルハルト先生の来日セミナーに行った時、晶葉さんらしい人が居なかったから。お兄ちゃんと一緒だったから、居たなら会ってたよなぁって思ってて」
「……そう。ちょうど体調が悪い時期で行けなかったの」
恐らくだが、妊娠中だから行けなかったと解釈されてるだろう。
でもこのセミナー、正確に言うと碧維が生後一ヶ月ぐらいの時だった。
そして車は、大通りのど真ん中で止まった。
大きな書店のあるビルの前だ。
「先生、これからよろしくお願いしますね」
そう笑顔を振り撒いて、瑛実ちゃんが降りていった。
自分も降りようかと思ったが、すぐに車は発進してしまい、降りるタイミングを無くした。
そもそもバイオリンはトランクに入っているので、開けてもらわなければいけない。
「先生」
「……その呼び方は」
「晶葉って呼んだ方がいい?」
クスっと笑うのが、フロントガラスにうっすらと映っている。
「……ご自由に、どうそ」
はぁとため息をついて、背中に体重をかける。
「二年ぐらい前のゲルハルト先生の来日セミナーに行った時、晶葉さんらしい人が居なかったから。お兄ちゃんと一緒だったから、居たなら会ってたよなぁって思ってて」
「……そう。ちょうど体調が悪い時期で行けなかったの」
恐らくだが、妊娠中だから行けなかったと解釈されてるだろう。
でもこのセミナー、正確に言うと碧維が生後一ヶ月ぐらいの時だった。
そして車は、大通りのど真ん中で止まった。
大きな書店のあるビルの前だ。
「先生、これからよろしくお願いしますね」
そう笑顔を振り撒いて、瑛実ちゃんが降りていった。
自分も降りようかと思ったが、すぐに車は発進してしまい、降りるタイミングを無くした。
そもそもバイオリンはトランクに入っているので、開けてもらわなければいけない。
「先生」
「……その呼び方は」
「晶葉って呼んだ方がいい?」
クスっと笑うのが、フロントガラスにうっすらと映っている。
「……ご自由に、どうそ」
はぁとため息をついて、背中に体重をかける。