小さな願いのセレナーデ
「……そろそろ晶葉の思いを聞かせてくれないか」
昂志さんはキャッキャと周りを走る碧維を見ながら、そう聞いた。
「碧維は俺に懐いている」と強調するように言って。

「……私はこれからも、碧維と二人で生きていくつもりよ」
「そうか」

静かに頷く彼。
ほっとする気持ちと─やっぱり少しは寂しさがある。
でもこれで良かったと、胸を撫で下ろす。


「じゃぁ質問いいか?」
彼が碧維の手を引き捕まえると──頭に手を置いた。

「俺にはオーストリアの血が混じってると言ったな?
だから俺ら兄妹の幼少期は、栗色の巻き毛に目はアンバーの強い色が出ていた……こんな感じでな」

ぐしゅぐしゅと彼の手が撫でる髪は──碧維の髪。
栗色の巻き毛をした、碧維の髪だ。


「それとこの親指の爪。心当たりがある。
それを踏まえて、この子の父親は一体誰だ?」

そう言われて、言葉が出なかった。


(まさか……バレていた……?)
沈黙が流れる中、バクバクと心臓のだけが頭に響く。


「……次会った時に、答えを聞かせてくれ」
そして彼は振り返り、車に乗るとすぐに発進していった。


(どうしよう……)
私は頭を抱えて、呆然と立ち尽くしていた。

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