小さな願いのセレナーデ

「それは、できない……」
「何で?」
「結婚しようと、思うの」
「誰と?」
「土屋秀機さんと……」

彼の顔が、変化するのがわかった。
「なぁ?本当か?」
目尻を吊り上げた、見たことがない剣幕で迫ってくる。

「ここで暮らしても、私はシングルマザーだった過去は変わらない。あなたは一生他人の子供を育てていると白い目で見られるわよ。碧維の父親は秀機君って噂もあるんだし。それに今度彼、ラークホールでコンサートをするの。そこで結婚相手として共演をしようと言われている。私も初めて、ラークホールの舞台に立てる」

彼の反応が怖くて、俯きながら話す。
なるべく彼を突き放す言葉を探しながら。

「それに彼の父親は会社経営してるし、お金に不自由しないし……」
「だったらお前は一生、責任を取ってもらうから結婚をした。そんなお情けで愛のない結婚が一生付きまとうぞ。いいのか?」
「だったらあなたも一緒じゃない。気まぐれでできた子供の責任を取って、何もない私と結婚するって…」
「認めたな」
「えっ…」
「ようやく俺の子だって認めた」

はっと顔を上げた。
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