No rain,No rainbow
ほらほら。

なおも促されて、諦めて出した私の左手を見た律さんは、

「あなたってひとは、まったくもう!」

言いながら、ボールに氷水を手早く作って持ってきてくれた。

ソファーに座らせた私の左手を、ゆっくり氷水に浸してゆく。

「大丈夫?」

心配そうに聞く、その目は相変わらず優しい。

「…律さん、優しい…」

つぶやいた声は、

「…ん…、」

優しいキスで塞がれた。



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