No rain,No rainbow
「…そこにベンチがあるんで、良かったら、どうぞ」

後ろから突然、掛けられた声に、ふたり同時に振り返る。

「…おー、すごいシンクロ率、ですね」

少し、びっくりした表情の、切れ長の目の長身の男の人が立っていた。

「ふたりで、地べたに座り込んでたら、つめたいでしょう?」

どうぞ、どうぞ。

ベンチを勧めてくれるけど、真一文字に結ばれたくちびると、目つきの悪さに、本心かどうか判断がつかなくて。

そんなこちらの動揺を見抜いたのか、

「あ、気にしないで下さい。俺、口悪いし、こんな顔なんで」

言いながら、もう一度、ベンチを勧めてくれた。


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