No rain,No rainbow
ゆっくりと、静かに語る、律さんの横顔。

話し出してから、律さんの横顔しか見ていない。

そのことに、不安を感じる。

「律さん」

ひとこと、呼びかけたらやっと、私を見てくれて少し、安堵する。

その目の色は、相変わらず深い。

「律さん。私はここに、います。どこへも、行きません」

まるで、深い穴に滑り落ちて行ってしまいそうに感じる、律さんにどうか、届いてほしいと、ゆっくり丁寧にひとことずつ、区切った言葉。

律さんの両手を、しっかり握った。

「大丈夫。だって、律さんの手のひらは、こんなにぬくいから。今までも、今も、私に優しさをくれるから。だから、大丈夫、です」

目をしっかり合わせて伝えたら、律さんの手のひらに力が戻ってきて、安心する。




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