No rain,No rainbow
やっと離れたくちびる。

でもまだ、なんだか足りない。

離れてしまった、くちびるを羨ましげに、眺めた。

こんなに、感情が鋭く素直になるなんて。

いっしょにいる相手が違うと、こうも感情が解き放たれて、真っ直ぐになるなんて。

不思議だけど、それも嬉しくて。

「…もう…あなたは、なんちゅー目でひとのことみるんですか」

もう、それこそこれ以上止まらなくなっちゃうので、勘弁してくださいよ。

苦笑しつつ、ベッドから上半身裸のまま、立ち上がった、律さん。

その背中には、痛々しい✕マーク。

でもちゃんと、直視する。

これが、律さんか踏ん張って、頑張って、負けずに生きてきた証、だから。

そうして、隠すことなく私に見せてくれるから。

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