No rain,No rainbow
「…あれ…オレ今日、泣きましたっ…け…?」

目を見開いて、驚いている律さん。

「…泣いて、ない…です…泣いてないですッ!!」

顔を見合わせる。

「「…こんなことって…」」

同時につぶやいた声は、シンクロしている。

「…え…な…っ、ど…ッ?!」

驚きのあまり、言葉にならない言葉を発する律さん。

…だって、20年近く毎晩毎晩、泣き続けたのに…

思いつくことすべてをしても、治まらなかったのに…

「…律さん、」

ただ、律さんの名前を呼べば、

「うたさんっ…」

私の名前を呼びながら、強く抱きしめてくれた律さん。

その髪の毛をただ、撫で続けた。










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