No rain,No rainbow
どれくらいの時間が経ったのか。

「今ずっと、考えてて」

私を抱きしめたままの律さんの背中から流れてくる声を、目を閉じて聞いている。

「はい」

返す返事は、ひとことで足りる。

「なんでかな、って。なんで涙が止まったのかなって」

あなたが横にいてくれるから。

今日の式で、素直にあなたの隣で泣けたから。

あなたがいつも、抱きしめてくれるから。

あなたと結婚できたから。

あなたがいてくれて、安心できるから。

「考えたら全部、『あなたが』って、つくんです」

もうオレにとってあなたは、出逢うべくして出逢った『必然』で。

あなたのおかげ。です。

体を離した律さん。

その目の色はどこまでも優しい。


< 540 / 551 >

この作品をシェア

pagetop