後味も甘く彩る
だって、私ファーストキスですらまだだったんだもん。それなのにこんないきなりって、ハードルが高すぎる。
……才原くんはどうせ余裕なんだろうな。だけど視界の隅に入り込んだのは、真っ赤に色付いた頬と耳だった。
「才原くん、真っ赤……」
「夕日です」
「え、そんなわけな「夕日です」」
咄嗟に顔を両手で隠して食い気味で返してくる才原くん。はじめて見る焦った姿が新鮮で、恥ずかしさも忘れてじーっと凝視していれば、観念したように才原くんが指の隙間からちろりと一瞬私を見た。
「……おこってますか」
「え?」
「いきなりこんなことしたの」
「……怒ってないけど、混乱してる」
才原くんは何を考えてるのかわからないところもあるけど、でも人を傷つけるような人じゃない。だからこそわからなくて、戸惑う。
いっそ、余裕そうにしてくれてたら多分すんなり納得できた気がする。理由なんてなくても誰とでも出来るんだろうなって、そう思えるから。
でも、自分から仕掛けてきたくせにそんな本気で照れたような反応されると、もしかして、って思ってしまう。