後味も甘く彩る
「……後味、俺がもらってあげます」
「え?」という疑問の声を上げる隙すらなく、次の瞬間には唇同士が触れていた。僅かに開いていた唇の間から舌が割り込んでくる。私の舌先に残るミルクティーの味を攫っていくように、舌を絡ませて、舌を吸って、お互いの唾液が混ざり合ってミルクティーが溶けていく。
ミルクティーなんかよりよっぽど甘くて、その甘さにくらくら目眩がした。
少しして、そっと触れていた唇が離れていく。離れた瞬間、間近で視線がぶつかって目が離せなくなった。
才原くんのガラス細工のように綺麗なヘーゼルの瞳の中に、私が閉じ込められていて。まるで、時間が止まってしまったかのように、見惚れていた。
「……後味、消えましたか、」
「わ、わかんない、」
あまりに突然のことだったから、まだ頭の整理がつかなくて混乱してる。後味どころか、自分の指先の感覚ですらあやふやで。
窓の外の部活動生の声も、カラスの鳴き声も、なにも聞こえない。ぜんぶ、意識を才原くんに奪われていってしまったみたいに。