ウソツキハート



「じゃあ、参りましょうか?」



少しおどけたあらたは、ベッドルームへと歩き出す。



そっとその腕に手を添えれば。



「もっとしっかり、掴まっとけ。」



あらたの声が頭の中に響いた。



掴まって、いいの…?



あたし、離れてあげないよ?



そんな問いかけは、音にはならなくて。



そっとちいさく、ため息をついた。



「あ、お前また。」



そんなあたしを目ざとく見つけたあらた。



あらたの目を見て、ごくん。大きくため息を飲み込んだ。



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