ウソツキハート



若くして、社長にまで上り詰めた彼は、毎日に疲れていた。



エレベーターの中で、あたしと交わす会話が、一時の癒やしになっていたという。



あたしは彼が社長だなんて気がつかなかったし、彼も敢えて言わなかった。



だからたぶん、良かったんだろう。



お互いに素直な気持ちで吐露しあったエレベーターの中の時間。



かけがえのないものだったと、思う。



そう気がついたのは、随分後になってからだったけれど。



彼は、どう思っていたんだろう…。



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