ウソツキハート



「さっき、あらたも聞いたでしょう?彼、『あんず』って。でも、呼びかけたのはあたしにじゃない。奥さんだったんだよ?笑っちゃうよねー?奥さんも『あんず』だったなんて。」



初めて聞いた、彼の奥さんの名前。



まさか同じ、『あんず』だったなんて。



「ねぇ、あらた。どう思う?やっぱりあたしを選んだのは、奥さんと同じ名前だったからかな?」



呼び間違えたりしたら大変だから。



だから、間違えようがない、あたしを選んだんだよね?



言葉が洪水のように、口から溢れ出す。



.
< 273 / 373 >

この作品をシェア

pagetop