ウソツキハート



「ありがとうございます!!」



必死に、その背中に叫べば。



くるりと一度、振り返った彼女は、赤ちゃんの手を持って、あたしに『バイバイ』をしてくれた。



…あぁ…駄目だ、泣くな。



自分に言い聞かせるも、零れそうになる涙。



それを隠すように、彼女と赤ちゃんに向かって大きく礼をした。



涙がすっかり乾いたタイミングで顔を上げれば、当然のことながら、彼女の姿はなくて。



そこにはただ、柔らかな風が吹いていた。



.
< 296 / 373 >

この作品をシェア

pagetop