政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
小野寺さんは不動産会社の社長ということらしいがどう見たって若い。感心していると、彼が視線を遠くに移す。私もそれをなぞるように視線を移した。
そこには楓君がいた。彼の隣には清川さんがいて、一緒に挨拶回りをしているようだ。
「ご結婚されたと聞いて、てっきり秘書の方とされたのかと思っていたのですが違ったんですね」
軽い感じでそう言った小野寺さんにはもちろん悪意はない。だからこそ、他の人も同じように思っているのだと知り胸が痛んだ。
清川さんが今いる場所は本来ならば私がいるはずなのに…―。
自然に落ちていく目線と同時に小野寺さんが私の顔を覗きこんだ。
「あの、大丈夫ですか?体調悪いなら、どこかで休んだほうが」
「そうですね。えっと名刺か何かいただけませんか?クリーニング代を後でお支払いしたいので」
「本当にいいんですよ!それよりも体調が悪そうですよ。今日はホテルの部屋取ってますか?」
「ええ、まぁ…」
「じゃあ送りましょうか?西園寺さんは今忙しそうですし」
「いえいえ、それは本当に大丈夫です」
小野寺さんが名刺入れから彼のそれを私に差し出す。
「小野寺幸一です。クリーニング代は別にいいので!本当に。ただ、西園寺さんとは親しくしてもらっているのでどうぞこれからもよろしくお願いします。後で西園寺さんにご挨拶に行かないと」
それを受け取ると同時に体がよろけてしまった。
小野寺さんが私の肩を抱きかかえるように支えた。すみません、と咄嗟に離れたが
「お久しぶりです、小野寺さん」
すぐに背後からぐっと誰かに肩を引かれる。