政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

「楓君、」

楓君は普段以上に抑えた声で「妻の日和です。ご挨拶が遅れてしまって申し訳ありません」といった。

「今ちょうど西園寺さんのことお話してたんですよ」
「そうですか」
「あの、楓君…私小野寺さんのスーツに飲み物を溢してしまって」

楓君の視線が小野寺さんのスーツにいく。

「それは大変失礼しました。後ほどスーツ代をこちらでお支払いいたします」
「いえいえ!別に大したスーツじゃないですし気にしないでください。それよりも奥様が体調悪そうですので、早く部屋で休ませた方が」
「…そうですね。ではまた後で」
「あの!本当にすみませんでした!」
「いえいえ、ゆっくり休んでください」

ぺこぺこと頭を下げるが、小野寺さんは陽気に手を振った。

楓君とは真逆のタイプだな、と思いながら楓君に手を引かれ会場を出た。
小野寺さんに迷惑をかけた件は楓君にも謝罪をしておかなければならない。それなのに、すぐに「ごめんね」といつもならば簡単に出るそれが出てこないのは楓君の醸し出している雰囲気に翳りがみられるからだ。

エレベーターに乗り込んだところで、ようやく口火を切る。
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