政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
そんなこともあり、彼が仕事以外にはすべて無関心ということは知っている。
「そうですか…」
「日和は?何が好きなの?」
「私は…甘いものは大好きですよ。あとは、うん…私も嫌いな食べ物ないんです。唐揚げとか揚げ物も好きです。でももっと好きなのは和食ですね。煮物系が特に」
「そうなんだ」
珍しく深く頷いた彼に私は嬉しくなって目を細めた。楓君も私に興味を持ってくれているのだろうか。
いずれ、私を好きになってくれるといいのになぁ。
「言い忘れてたけど、」
皿の上のおかずがほぼ無くなりかけたとき、彼が言った。
「食べ物の好き嫌いは別にない。生活する中での拘りもほぼないと思っている。ただ、」
うんうん、と頷く私は次の言葉で完全に思考が停止した。
「ただ、好きなのは日和かな」
「…え」
「ごちそうさまでした」
目をしばたたき、焦点をどこに合わせたらよいのかわからない私は硬直した。サラッとそう言って食器を下げるとそのまま浴室へ向かった楓君の言葉を何度も頭の中で反芻するがエスパーでもない私は彼の言葉の真意を掴むことが出来ないで呆然とその場から動けずにいた。