政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
午後から仕事があり清川さんの発言のせいで仕事に集中できずにいた。

ちなみに斎藤さんは私が楓君の妻ということは誰にもばらしていないようだ。短時間の仕事を終えると自宅に帰宅した。

 清川さんがあのネクタイを持っていたという意味を考えるが、やはり楓君が彼女の家に行ったからなのだろうか。街中は既にイルミネーションで輝いていた。キラキラと輝くそれを見るとあまりにも自分とは対照的で目を伏せたくなった。

 クリスマスイブは彼と過ごしたい。誕生日も一緒に過ごしたい。
でも仕事が一番大切だということも理解している。
冷えた体が更に外気のせいで体温が下がっていく。冷たくなった指を合わせるようにして息を吹きかけた。

…―…


 この日、楓君の帰宅時間は遅く日付が変わった頃に帰ってきた。
今日は会食があるということは事前に聞いていた。彼から微かにアルコールの匂いがした。

「どうかした?なんか元気ないけど」
「そんなことないよ」
「体調悪い?」

 ううん、と首を横に振るが楓君は疑いの目を向け続ける。
背広を脱ぎネクタイを緩める彼からつい視線を逸らしたのは、清川さんのことを思い出したからだ。
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