政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「誕生日のことなんだけど…仕事忙しいと思うから休み取らなくていいよ」
「どうして?もう予約してるよ、店は」
「何時から?」
「18時だけど」
「…仕事は休まなくても行けるから…だから無理しないで」
西園寺家に嫁いだのに、妻として仕事をする夫を支えることが出来ていないなど何のために結婚したのだろう。
「何かあったの?忙しいのは確かにそうだけど別に無理してるわけじゃないよ」
「…でも、平日だし、」
「いいって」
楓君が不機嫌になりながら私の手首を掴んだ。ビクッと肩を揺らしたが彼はそんなことはお構いなしに私を引き寄せる。
ふわり、優しく抱きしめられた。
「そんなに俺と過ごすのが嫌?」
「そんなことない」
「だったらいいじゃん。俺が一番に日和の誕生日を祝いたいだけ」
「…ありがとう」
罪悪感もあるが楓君の強い希望により私の誕生日は仕事を休むようだ。
清川さんが今日持ってきたネクタイの件を彼に伝えることは出来なかった。