政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
♢♢♢

「じゃあ順調なんだ!凄いな~」
「今のところね。何があるかわからないし、常に気を付けて生活してる」

舞衣子と電話をしながら彼女のお腹の中ですくすくと成長する子供の話を聞いてほっこりとしていた。

親友の幸せな話題は本当にうれしい。ソファの上で膝を抱えるようにして通話をしていると、「そういえば」と舞衣子が話題を変えた。

「旦那さんとはどうなの?順調?」
「…あー、うん。順調ではない」
「え?…それって、つまり…」

楓君の話題になると途端に言葉数が少なくなる。舞衣子もそれを察知したようでやんわりと訊いてくる。

私は清川さんの件を彼女に話した。以前も彼女に話を聞いてもらったことを思い出す。

 あのネクタイの件を楓君本人に確認できずにいること、それだけではなく昔関係があったような発言を清川さんがしていたこともずっと心に残っている、と。
ぐちゃちゃに塗りつぶした絵具のように混ざり合った感情を舞衣子に言うと電話越しから笑い声が聞こえた。

「舞衣子?」
「なるほどね。その清川って女は日和を敵視していて常に嫌なことを言ってくるんでしょ?まぁ、日和の旦那のこと大好きなんだろうね。でもさ、旦那の気持ちは?ちゃんと聞いた?」
「楓君の気持ち?」
「だって、私からみたらものすごく大切にされているように見えるんだけど?」
「…それは、政略結婚してるから。なんていうか…楓君なりにこの関係をよくしようと努力してくれてるんだと思う」
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