政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
ついに言ってしまった。口から出た言葉は絶対に戻すことは出来ない。
楓君はキョトンとした顔で何も言わない。

―ごめん

 そう言われるのだろう。想定内ではあるが、ギュッと目を閉じて彼の声を待った。
しかし、彼から出た言葉は私の想像していたものではなかった。

「それって、恋愛の好きって意味?」
「へ…?」
「どういう意味」
「どういう意味って…そのまま、だよ。だから、私はずっと楓君のことが好きなの!異性として好きっていうことだよ」
「…」

楓君はどうしてか泣きそうな顔をしていた。
日和、そう名前を呼ぶ声は一段と優しい声に変化する。涙が溢れて視界が歪む。

「それは、今日俺が先に言うはずだった」
「…え?」
「先に言わせてごめん。俺も日和のこと好きだよ、ずっと好きだった。小さな頃に沖縄で出会った時から」

 想定外の言葉が胸の奥に積もっていく。
これは夢なのではないかと錯覚するほどに非現実的なセリフだった。しかしこれは現実で、今聞いた言葉が事実なのだ。
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