政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
♢♢♢

「楓君!はい、これお弁当」
「え?いいの?」
「もちろん!よかったら食べてね」

 主婦の朝は忙しい。朝食を作りお弁当も作るようになったから早起きしなければならない。
しかしそれらに労力を使うことはなんら億劫ではない。
 何故なら彼のことが大好きだからだ。
この気持ちを言葉にして伝えることは可能だけど、言葉では言い表せないほど私は彼を愛しているから困る。

 楓君がネクタイを結ぶ姿もジャケットに腕を通す姿も、何もかもがかっこよくてつい見惚れてしまうことは内緒だ。
いってきます、そう言って背を向ける彼に声を掛けた。

「待って、楓君!!」
「どうした?」

 私は飛びつくように身長差のある彼の首に手を回した。
彼は驚きながらも屈み、私に視線を合わせようとするところで迷わず彼にキスをした。

「…」

無言で目をしばたたく彼に私は口元に弧を描き言った。

「”行ってきますのキス”は常識ですから」
「…反則でしょ、それ」

朝から相変わらず甘ったるい雰囲気が流れている。
この雰囲気がたまらなく好きだ。







完結
< 227 / 231 >

この作品をシェア

pagetop