政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

ぐっと彼が中に入ってくる頃には総身の汗がシーツを濡らし、脱力する。
今までのセックスと今のセックスは同じはずなのに幸福感に満たされているせいか比べ物にならないほどに気持ちが良くて涙が止まらない。

 その都度楓君が涙を舌で拭った。

「…好きだよ、日和」

満足するまで何度も愛の言葉を伝えてくれる彼の首に腕を回した。

「…っ…あ、…っ、ぁ、」

 楓君のくれる好きに返事がしたいのにそれすら余裕がなくなっていく。
広い客室内では、私の嬌声に楓君の息遣いの音が響く。

簡単に絶頂を迎える私を休ませることなく、彼は動き続ける。
幸せ過ぎるこの時間を今日は最後まで噛み締めていたかった。しかし、ようやく行為が終わる頃にはいつも通り眠ってしまった。

…―…


翌朝

 目を覚ますと楓君が隣にいた。彼は私を抱きしめている。
長い睫毛がゆっくりと動く。

 彼の腕の中で目を覚ますとこんなにも幸せな気分に浸ることが出来る。
そして、妻としてこれからもずっと彼と一緒なのだと思うとそれだけで十分すぎるほどの幸福感を覚えた。

「おはよう」
「おはよう…」
「昨日は日和が可愛すぎるから無理させたかもしれない。大丈夫?」
「全然大丈夫だよ!」

 楓君の眼差しはいつも以上に温かい。柔らかい彼の髪に触れるとその手を絡めとられる。
彼の行動一つ一つに私はこうやって心を乱される。あの沖縄での出会いからようやく初恋が実ったのだと思った。
午前中は彼がお休みを取ってくれていたからホテルでゆっくりすることが出来た。

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