政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
♢♢♢

その日の楓君の帰宅はとても遅かった。
時計の針が22時を指し、先に夕飯を食べ終えてお風呂にも入った後にようやく彼が帰宅した。
「おかえりなさい」
「ただいま」
疲れた様子の楓君はネクタイを緩めながら部屋着に着替えるために自分の部屋に行く。
私は作っていた夕飯をダイニングテーブルの上に並べた。
彼が一日どのように仕事をしているのか気にならないわけではない。むしろ仕事をしている彼のことを深く知りたいと思っていた。


パジャマ姿のままウロウロしていると、夕食前に着替えた彼がダイニングテーブルの椅子に腰かけずに私に近づき、手を広げた。
「え…」
固まる私をよそに、表情を変えずに「はい」といった。
(つまり、今彼の胸の中に飛び込めばいいということであっている?合っているよね?)
今日は二回のハグが待っている。私は何度か頷いて目を閉じたまま楓君の胸に飛びついた。

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