政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

 悶々としたまま、時間は更に過ぎた。
夕食後に皿を軽く洗い、朝の朝食の準備や彼の会社に着ていくシャツも同様に準備する。
 楓君もお風呂を終えると食器棚からワイングラスを取り出して自分の部屋へ行こうとする足を止めた。

「日和も飲む?」
「え?!私も?」
「酒飲めるの?」
「…飲めるかと聞かれるとかなり弱いかな」
「ふぅん、そっか」

お互い部屋はちゃんと用意されている。楓君の部屋は掃除のため何度か入ったことがあるが、一般的なリビングの広さがある。私の部屋も同様だが、正直なところ自分の部屋はベッドが置けたらそれでいいと思っているから広すぎる。

 楓君のベッドも私のベッドも大きさは私がセミダブルで彼がクイーンサイズだ。楓君を一瞥すると、ワイングラスを持ったまま、私を誘うような目を向けていた。

「…じゃあ、ワイン私も飲もうかな」
「俺の部屋でいい?」
「うん」

 敬語を使わないように意識しながら会話を進める。
舞衣子の言う通り、楓君がもしも他に好きな人や愛人がいるのであればそれはとても悲しく辛い。
 キスすらしない夫婦だったら夫がそうなってしまうのも仕方がないのだろうか。
もっと、距離を縮める努力を私からしていかなければいけないのかもしれない。
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