政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
数口飲むと徐々に酔ってきている感覚が自分でもわかるほどになった。

「そういえば今日のハグ、残り一回残ってる」
「…」

 ワイングラスを手にしたまま、私の動きは完全に静止する。
視線を感じるものの彼の方を見ることが出来ない。瞬きを繰り返した後、ゆっくりとワイングラスをテーブルに置いた。
私は彼の方に体を向けると、真剣な表情の彼と目が合った。

「…顔が今まで見た中で一番赤くなってる」
「そりゃ、だって、お酒強くないから…」
「だろうな。その顔、他の男には見せんなよ」
「…っ」

艶っぽい彼の瞳が私を映す。心臓が早鐘を打つのと同時に私は彼の首に手を回した。

「日和っ…」
「顔見ないで!恥ずかしいよ」

 自ら彼に抱き着くとぎゅうっとその力を強めた。羞恥でどうにかなってしまいそうだけど、私も彼と向き合いたいから。彼と距離を縮めたいから。
これで仲良くなれるのならば、何度だってする。頑張りたい。お酒の勢いもあったのかもしれない。
 普段の自分では考えられないほどに大胆な行動をした。楓君の反応が知りたい。

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