政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
それからというもの、敬語を使ってしまっても楓君とハグはするものの以前とは明らかに違うハグになった。
どういうふうに違うのかというと、ふわっと軽く抱きしめるだけのものになった。
もちろんそれでも十分に満足できるけれど、あまりにも以前と違うものだから戸惑っていた。そして、今日は楓君の出張がある。
キャリーケースを手にして
「行ってきます」
といった楓君に繕った笑顔を向けた。
来月は海外に何日か出張もあるようだし、来週は会食もあるようだ。
彼は仕事の話は一切しない。だからどのくらい大変なのかあくまでも想像するしかない。もう少し彼のことを知りたいのに、どういうふうに距離を縮めたらいいのかわからない。ハグを頑張ってみたのに楓君は想像とは違った態度を示したから。
玄関まで見送りに行こうとすると、突如インターホンが鳴った。二人で足を止めていると、楓君が思い出したように早足でインターホン画面が表示されるそれに近づく。
無言でオートロックを解除すると、
「秘書が来る」
といった。
「秘書?」
「そう。何年も俺の秘書を担当してる清川涼香」
「清川…さん」
初めて聞いた名前を諳んじて女性だということを理解していると、インターホンが鳴った。
どういうふうに違うのかというと、ふわっと軽く抱きしめるだけのものになった。
もちろんそれでも十分に満足できるけれど、あまりにも以前と違うものだから戸惑っていた。そして、今日は楓君の出張がある。
キャリーケースを手にして
「行ってきます」
といった楓君に繕った笑顔を向けた。
来月は海外に何日か出張もあるようだし、来週は会食もあるようだ。
彼は仕事の話は一切しない。だからどのくらい大変なのかあくまでも想像するしかない。もう少し彼のことを知りたいのに、どういうふうに距離を縮めたらいいのかわからない。ハグを頑張ってみたのに楓君は想像とは違った態度を示したから。
玄関まで見送りに行こうとすると、突如インターホンが鳴った。二人で足を止めていると、楓君が思い出したように早足でインターホン画面が表示されるそれに近づく。
無言でオートロックを解除すると、
「秘書が来る」
といった。
「秘書?」
「そう。何年も俺の秘書を担当してる清川涼香」
「清川…さん」
初めて聞いた名前を諳んじて女性だということを理解していると、インターホンが鳴った。