政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「じゃあ、行ってくる」
「気を付けて…いってらっしゃい」
楓君が自宅を出たときに気づいたことがあった。それは微かに、本当に微かにではあるが甘い香りがした。
それは以前楓君とハグをした際にした香りだった。
「…清川さんの香水?」
今日は大阪に一泊するらしいが、それに秘書も同行するようだ。
つまり、楓君と清川さんは同じホテルに泊まることになるはずだ。
あの香りが楓君の衣服からするからと言って別に清川さんの香りが移ったという証拠はない。
ただ、あんなに綺麗な人が秘書だという事実は私の心を不安定にさせた。
(大丈夫だよね。浮気はないよね。でも、政略結婚ということは…楓君に好きな人がいても不思議ではないから…)
悄然とした面持ちのままその場に立ち尽くしていた。