政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

 その日は楓君のことばかり考えてしまって家事に時間がかかっていた。
洗濯ものを畳みながらため息を吐き、掃除機をかけながら物思いに耽る。せっかく初恋の彼と結婚することが出来たのに…両想いでなければ辛さは増すばかりだと気づく。
 もっと恋愛経験が豊富だったらよかったのに。

 夕食は私の分だけでいいから今日は外食でもしようかと適当に化粧をして家を出た。気分転換に外に出たかったという理由もあった。

 ロングスカートから少しばかり素肌が覗く部分が思いのほか寒くて着てくる服を間違えたかな、と思っていると肩を背後から誰かに叩かれる。

 振り返るとそこには松堂君がいた。

「え!松堂君!この間といい…偶然だね!」
「うん。今日は学会発表があってその帰りだよ」
「へぇ、そうなんだ!お医者さんになってもそういうのあるんだ!」
「もちろん、あるよ。医者だって常に勉強しないとね」
「すごいね」

 たまたま街中をフラフラと歩いていると松堂君に会った。偶然とはいえ、驚いた。彼は今日、学会発表のため病院を休んでいるそうで、代わりに代診の先生が診察を行っているらしい。
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