政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
…―…


「んー、楓君は何が好きかなぁ」
 広すぎるリビングルームで独り言をつぶやく。
夕飯を考えながら大好きなショートケーキを頬張っていた。
そして、今朝のことを考えていた。
(夫婦って何だろう?)
 普通の夫婦は愛し合って結婚をして家庭を築いている。でも、私たちの場合は特殊だ。それでいて、私は他の女性とは少し違うと思っている。
それは未だに処女であり、キスすら経験がない。小学生からエスカレーター式の私立学校に通っておりそれは女子高だった。そのため男性と付き合った経験がない。手を繋いだことももちろんないのだ。
だから今朝の楓君のあの行為は私にとって一大事である。

「はぁ、キスかぁ」

 結婚式は盛大に行われた。しかし何度もお願いをしてキスだけは頬にしてもらった。唇にしてもらう勇気がなかった。楓君によると夫婦は行ってきますのキスは普通だといったが、それは私にはあまりにもハードルが高い。

と、楓君のことを考えているとスマートフォンが鳴った。ちょうどテーブルに置かれたそれが振動している。

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